もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。
目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)
2013
私は昔からこの国の人たちに慕われていました。
春になると人々は私のもとへ集まります。
大人たちは酒をかわし、子供たちは花を摘んで飾りを作り、恋人たちは私の前で愛を語らいました。みんな笑顔で私を愛でました。
私はそんな彼らを見るのがとても好きでした。花をつける春が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
ところがどうでしょう。
ここ数年は私の周りに集まる人たちがぐっと減ってしまいました。
それどころか、私がいくら綺麗な花を咲かせても、人々に笑顔すら浮かびません。
花が散る頃になると、すすり泣く人の姿も見えました。
一体何が起きたのでしょうか。
その原因はこの国の情勢にありました。
今この国は大きな戦をしています。
戦争に行く人たちは私の生き様を自分の人生に重ね、憂いていました。
残された人たちは私を見るたびに尊敬と畏怖の目を向けました。
いつか満開の花を咲かせ、朽ちる前に潔く散る――それが美しき人生なのだとこの国の人たちはうたいました。
私は戦争という大きな渦に利用されたのです。
私は悲しみに打ちひしがれました。私はみんなの笑顔が見たくて生きてきたのに。
花は散ることはあれど、葉は残ります。生い茂り朽ちたあとも蕾をつけて次の春を待ちます。
私は死にゆく存在ではないのです。
だからどうか――どうかそんな顔しないで下さい。私は生きる希望でありたいのです。
私は祈ります。来年もたくさんの花を咲かせられますように。そしてみんなの笑顔が戻りますように――と(649文字)
春になると人々は私のもとへ集まります。
大人たちは酒をかわし、子供たちは花を摘んで飾りを作り、恋人たちは私の前で愛を語らいました。みんな笑顔で私を愛でました。
私はそんな彼らを見るのがとても好きでした。花をつける春が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
ところがどうでしょう。
ここ数年は私の周りに集まる人たちがぐっと減ってしまいました。
それどころか、私がいくら綺麗な花を咲かせても、人々に笑顔すら浮かびません。
花が散る頃になると、すすり泣く人の姿も見えました。
一体何が起きたのでしょうか。
その原因はこの国の情勢にありました。
今この国は大きな戦をしています。
戦争に行く人たちは私の生き様を自分の人生に重ね、憂いていました。
残された人たちは私を見るたびに尊敬と畏怖の目を向けました。
いつか満開の花を咲かせ、朽ちる前に潔く散る――それが美しき人生なのだとこの国の人たちはうたいました。
私は戦争という大きな渦に利用されたのです。
私は悲しみに打ちひしがれました。私はみんなの笑顔が見たくて生きてきたのに。
花は散ることはあれど、葉は残ります。生い茂り朽ちたあとも蕾をつけて次の春を待ちます。
私は死にゆく存在ではないのです。
だからどうか――どうかそんな顔しないで下さい。私は生きる希望でありたいのです。
私は祈ります。来年もたくさんの花を咲かせられますように。そしてみんなの笑顔が戻りますように――と(649文字)
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プロフィール
HN:
和
HP:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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