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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0405
 病院の待合室で待っていると、入口からもの凄い勢いで山瀬が走ってくるのが見えた。
「美緒は? 美緒はどこだ?」
 山瀬が私を見つけ叫んだ。彼の首筋から汗がだらだらと流れていた。
 私は一回うつむいた。そして天井にぶら下がっている看板に目を向ける。そこには手術室と書いてある。
「打ちどころが悪くて――覚悟しとけって」
「そんな」
 山瀬はがくりと膝を折った。
 美緒は私達のバイト仲間だ。昨日もファミレスに集まって一緒に夕飯を食べた。山瀬と美緒はいつものようにお互いをからかいあって最後にケンカ別れをした。
 山瀬は唇を噛みしめている。悪態をついているけど山瀬が美緒のことを好きなのはバレバレだった。
 それがこんなことになるなんて。誰がこんなことを予測できただろう。
 沈黙が続く。しばらくして診察室の扉から人が出てきた。
「あれ? 山瀬じゃん」
 見知った顔に山瀬は驚きの色を隠せない。
「みみみ、みおおっ?」
「こんなところで会うなんて奇遇だねぇ」
「おま、病院運ばれたって……」
「店長のこと? 脳震盪起こしたけど問題ないって」
「はぁぁあ?」
 山瀬がすっとんきょうな声をあげた。どういうことだといわんばかりに私の方を見る。
 でも私は今日見たことを正直に話しただけだ。
 今日店長が脚立から落ちて病院に運ばれた。美緒は付添いで一緒に乗っただけ。まぁ覚悟云々は悪い冗談だけど。
「でもこうでもしなきゃあんたは素直になれないでしょ?」
 お節介な嘘吐きの言葉に山瀬は目を丸くした。そのあとで参ったな、とつぶやく。
「そういうことかよ……」
 山瀬はため息をつく。その横でひとり事情を掴めない美緒が不思議そうな顔をしている。
「なに? いったいどゆこと?」
「ぜってー教えねぇ」
 そう言って山瀬は美緒を抱きしめた。美緒の口からふぎゃあ、と悲鳴が上がる。
 お幸せに。
 私はひらひらと手を振ってその場を離れた。(809文字)

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プロフィール
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性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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