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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0419
 今年の文化祭、うちのクラスは演劇をすることになった。演目はロミオとジュリエットだ。
 シェイクスピアの原文は台詞が長く難しい言葉も多い。現代風の砕けた台本もあったけど、原語にこだわったのは先駆けとなる人たちがいたからだ。
 去年の文化祭で三年生が演じたリア王は私たちに衝撃を与えた。言葉の意味は分からなくても口調や動きで内容を理解できたし、何より演技している人達が堂々としていた。
 私たちもあんな風に演じてみたいね。 
 その一言からクラスの出し物が決まった。だが現実は甘くなかった。
 原語のままの台詞はほぼ全員が覚えられずにいる。そのうち部活だ塾だと理由をつけて練習をさぼる人間が出始めたのだ。
 しまいには主役のひとりが(自分で立候補したくせに)出来ない、役を降りたいと言い始めた。
 芝居班のぐだぐだぶりに、裏方班も士気を失っていた。舞台の背景はもちろん、衣装も小道具も出来上がらない。
 先生は「自分たちで決めたことだから自分たちで何とかしろ」と言うだけだ。
 このままだとヤバイ――クラスの誰もが思った頃、私たちのクラスに来客がきた。去年、リア王を演じた先輩だ。
「文化祭でシェイクスピアやるって聞いたから覗きに来たんだ。今年はロミジュリだって?」
「ええ、まぁ」
「どしたの? 元気ないけど」
「その、みんな色々手を焼いてまして」
 私は言葉を濁す。
 ノリだけで決まった出し物だけど、私達にシェイクスピアは無謀だったのだ。 
 それを考えると先輩達はすごい。受験でいっぱいいっぱいだったはずなのに彼らは立派に演じきったのだ。
「先輩はあの量の台詞をよく覚えられましたね」
「あー、あれ口パクだったから」
 その一言に衝撃が走った。
「あらかじめ録音していた声に合わせて人が動いてたの。あの量の台詞は手に負えないし。そんな時間あったら英単語覚えたほうが有意義だって」
 あっけらかんという先輩にその場全員の腰がくだけたのはいうまでもない。(828文字)

このあとクラスの士気は復活し無事カーテンコールを迎えましたとさ。

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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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