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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0421
 宵闇の中で物音を聞いた。
 私はそっと体を起こす。触台を持ち廊下に出ると外へ出る扉の前に彼の姿を見つけた。伸びかけの金髪はひとつにまとめられている。身なりを整え、一振りの剣を腰に抱えていた。
 私は彼の行く先を悟り、問いかける。
「行くのですね」
「ああ」
 彼ははっきりと答えた。深紅の瞳に希望の光を携えて。 
 彼は隣国の王子だった。ひとつの罪を犯し、雪と厳しい寒さに覆われた国境を越え、この村へ着いた時は虫の息だった。
 私は彼と初めて会った時のことを思い出す。彼は自分自身を「災いの種」と呼んでいた。己の存在は国を滅ぼす、だから消えていなくなるべきだと。当時彼の目に生気は宿っていなかった。
 だが、彼はひとりの少女に救われた。
 小国民だった少女は掟によりこの国を背負わされた。ただでさえ大変なことなのに、彼女は彼を受け入れた。それが破滅への道だと分かっていても差し伸べた手を離すことはなかった。
 この国は今、罪人を匿ったことを立前に隣国から侵略されていた。すでに都は焼かれ、城も制圧されている。彼女は捕えられ隣国に投獄された。瀕死だった彼は極秘にこの村に運ばれ、今日まで匿われていた。
 彼は言った。城が落ちた時、側近も侍女も殺された、彼女の愛する人も彼女の目の前で殺されたと。
 知り合いたちの死を私は悲しんだ。そして彼は自分を責め続けていた。
 己のせいで国を滅ぼしたこと、彼女を護れなかったこと、そして大きな力の前に自分が叶わないことを彼は思い知らされていた。  
 でも彼は再び立ち上がった。彼女を救うために。
「貴方に神の加護がありますように」
 巫女である私は彼に祈りを捧げる。その先の未来を知りつつも、無事を願わずにいられなかった。
 彼は私に感謝の言葉を述べ旅立っていった。重い扉が閉まり重苦しい闇が訪れる。
「行ってしまわれましたね」
 気がつくと私の隣りに人が立っていた。
「これでよかったのでしょうか?」
 疑問を投げかけられ、私は答える。 
「彼は自分の進む道へ――本来在るべきところへ向かった。ただそれだけだけのことです」(882文字)

昔に書いた掌握の続き。巫女さんは未来予知の力があり、この先の展開を知りつつも王子を見送る、そんな話。

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プロフィール
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性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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