もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。
目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)
2013
彼女宛てのメールを飛ばすことなく、俺は立ち上がった。ゆっくりとした足取りで会社を出て駅へ向かう。こんな日は酒でも飲まないとやってられない。俺の足は自然と繁華街へ吸い込まれていった――
パソコンにここまで打ち込んだあと、何かの気配を感じた。
私はそちらに目をやり――ぎくりとする。寝てたはずの息子が布団の上に座っていたからだ。目を覚ましたばかりなのか、息子は辺りをきょろきょろしながら、誰かを探している。パソコンの前にいる私と目があってから、ふぇえと情けない声をあげる。私にはその泣き声が、ふざけんな、と怒っているようにしか聞こえない。さっきまで一緒にいたじゃないか。腕枕してたじゃないか。またすり抜けの術を使いやがったな、と。
はいはい、申し訳ありません。お母さんが悪うございました。
私は心の中で呟くと息子の所へ向かった。抱っこし背中をトントンする。すると寝かしつけるんじゃねえと反抗された。私は壁にかかった時計を見る。時刻は三時半を回っている。ああ、こりゃ駄目かもしれん。私は早々に諦めると息子の名前を呼んだ。
「お腹すいてきた? おやつ食べる?」
そう聞くと泣き声がぴたりと止まる。はい、と返事が返ってくる。くはっ、げんきんなヤツめ。
「じゃあ台所にあるお菓子とってきていい?」
そう言って私は息子を下ろそうとするが、息子は私にしがみついたまま離れない。やれやれ。私はひとつため息をつく。ひっつき虫を抱えたまま台所に向かった。おやつの用意をしつつ、私はさっき書いたお題小説の続きを考えてみる。そういえば女パートは外に出た所で終わっていたっけ。いっそのこと、女を先に居酒屋に行かせて男と鉢合わせてみるのも面白いかもしれない。また機会があったら書いてみよう。
そんなことを思いながら私は牛乳をコップに注いだ。一度レンジでチンして温める。片腕で息子を支えながら、お菓子とできたばかりのホットミルクをテーブルの上に置いた。息子を椅子に座らせる。子供がおやつに集中しているのを確認したあとで、私は再びパソコンの前に戻った。本日の更新作業を進める。無事アップロードできた所で、私はほう、とため息をつく。
私がお題小説を始めてからふた月半。最初は無理かも、と思ったけど「案ずるより産むが易し」とはよく言ったもので、それなりに物語は書けるものだと気づいた。要は集中力の問題なのだろう。創作に取りかかれるのは子供が昼寝をしている間だ。
私は二時間あるかないかの限られた時間で小さな物語を紡いでいく。それは些細な日常だったり、恋愛だったり。たまにファンタジーを書くこともあった。二時間ほどで書きあげた話は推敲もろくにしてない。それでも物語を完成させたことで私は満足と自信を取り戻していた。
春に始めたこの挑戦も一つの節目を迎える。今日で最初に与えられた八十個のお題を全て消化したのだ。それぞれの物語は稚拙で、恥ずかしくて、物足りない。それでも話を書くのはとても楽しかったし、その途中で続きや新しいアイディアが膨らむという嬉しい誤算もついてきた。悪戦苦闘した時もあったけど、とても有意義な時間だった――って、過去形で結ぶともう終わりみたいな感じになるけど、私の修行はまだまだ終わらない。
私には目標がある。それは滞っていた物語の続きを再開し完結すること。何年ごしになるか分からないけど、愛着のあるキャラたちを幸せな結末へ導きたいのだ。
ああ、そうだ。そろそろ競作企画のネタもそろそろ取りかからないと。毎年参加している夏の企画だが、今回は恋愛ものにしようかと考えていた。実はクライマックスのシーンだけ文章に起こしている。夕暮れの堤防に座りこむ男女の姿。男の背中に体重を預けながら自分の気持ちをぶつける主人公――このシーンは私の中でも思い入れが強くて描写にも気合いが入る。まさに腕の見せ所ってやつだ。
私が妄想にふけってにたにたしていると、息子に頬をつねられた。物語もいいけど、こっちもちゃんとみなさいよね、そうもの申したげな眼差しだ。
私は苦笑すると少しだけ肩をすくめた。(1695文字)
ということで、ラストは私小説っぽいので。現実との違いは娘だってことと、企画のクライマックスまだ書けてねーって所でしょうか。
本日で80フレーズⅠが完了。明日から3日ほどお休みを頂き、木曜日から80フレーズⅡを開始します
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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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