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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0415
 思春期になると異性のことが何かと気になるようになる、と授業で習った気がする。薄着になる季節はなおさらのことかもしれない。
 ここでも野郎どもの品評会が始まっていた。
「長山あたりはどう?」
「顔は可愛いけどセクシーさが足りないな」
「林は?」
「んー、胸でかいけど太りすぎ」
「じゃあ小池」
「『二次元』なんか論外。全然萌えねーって」
 一人の発言にどっと笑いが起こる。体操着姿の女子がこちらをいぶかしげに見た。野郎たちが慌てて口を塞ぐ。
 ちょうどボールが転がってきたので、審判をしていた僕はそれを拾ってコートに投げ入れた。
 得点板のもとへ戻る。なんとなく、視線がネットの向こう側へ移った。女子がバレーボールの試合をしている。目につくのは噂の人物だ。
 髪型は痛いツインテール。アニメキャラの限定ハンドタオルを巻いていた。舌っ足らずの声はソプラノを超えて超音波。メガネがずり落ちているのは鼻が低いせいだ。体は扁平で横から見ても女性特有の胸や尻の膨らみが見えない。
 女子たちからはウエスト細い、なんて言われているけど、男子からは栄養失調じゃね? という反応しか返って来ない。
 彼らの言う「二次元」というのは彼女のアニメオタクをもじったわけでなく、「まるで絵のような肢体」という皮肉がこめられているのだ。
 しばらくして授業終了のチャイムが鳴った。
 ツインテールが翻る。小池は真っ先にコートを飛び出した。これから着替えて新刊の漫画を買いに行くのだろう。野郎どもは小池を横目に思い出し笑いをしていた。
 奴らは知らない。小池の走っている姿が、それこそ絵のような美しさだということを。
 小池は小学生にして全国レベルの俊足を持っていた。卒業前に靭帯を損傷しなかったら今頃他校の陸上部で活躍していただろう。
 けどそんな過去を知る者はいなかった。この中学に彼女と同じ小学校だった奴はいない。もしかしたら小池自身がそれを望んでこの学校を選んだのかもしれないけど。僕は偶然知ったけど本人にも他人にも言う気はなかった。
 小池の背中を見送る。輝きを取り戻している彼女に僕は安堵とは別の感情を抱いていることに気づき始めていた。(910文字)

中学の体育授業のヒトコマ。何だかんだで話に陸上ネタがちらついてしまうという……

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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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