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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

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 今、隣りにいる男は大学のサークル仲間である。
 奴は漫画で言う所の当て馬キャラだ。とにかく恋に報われない。
 いい雰囲気になったなーと言う所で告ると実は本命が、な展開になる。付き合っても他の男に横取りされる。別れ際の台詞は「貴方はいい人だからもっと素敵な人が現れるわ」が定番だ。とにかく損な役回りしか来ない。
 更に厄介なのが、その元カノたちと今でも連絡を取り合っていることだ。どういうわけか奴は彼女達に相談を持ちかけられる。彼女ら曰く、奴なら口も堅くて、安心して相談できるから、らしい。
 だが彼女達は知らない。自分が持ちかけた相談内容が全て私に筒抜けだということを。
「ねー、ケイちゃん。今日、元カノに会って話たんだけど」
 今日も奴は元カノの相談を受けていたらしい。私はどの元カノよ? と聞き返す。
「えーと、半年前に別れた芹沢さん。ケイちゃんと同じ大学の」
 ああ、あの女ね。私は心の中で舌打ちする。彼女は「自分の方が似合うから」という理由で人のモノをパクるのが趣味だった。服もバッグも男でさえも。彼女に泣かされた人間は数知れない。彼女持ちばかり狙う中、シングルだった奴とつきあったのは唯一の奇跡と言ってもいいだろう。
「なんかね、バイト先の店長の事好きになっちゃったんだって。で、その店長ってのが結婚してて」
 あのビッチ、とうとう妻帯者に手を出したか。
「他に好きなのができたなら別れればいいじゃん」
「でも、今の彼氏ってのがすごく優しくてその、体の相性もいいんだって。自分をこんなに大切に思ってくれる人は居ないから別れるのは申し訳ないって」
「つまり今の彼が金持ちでセックスも上手いから簡単に捨てられませんってことだね」
「そこまで露骨に言わなくても。ケイちゃんって芹沢さんの話になると不機嫌になるよね」
「そお?」
「芹沢さんはケイちゃんが思うほど悪い人じゃないよ。彼女は純粋で素直で、自分に嘘がつけないだけで」
「はいはい、あんたの前ではそうでしたねぇ」 
 私は厭味ったらしい言葉で話を切る。奴のお人よしは天然記念物並みだ。聞くだけでイライラしてくるので奴に背中を向けた。
「もしかして――まだ元カレが芹沢さん好きになったのが許せない?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ何で?」
 奴に問われ、私はうろたえる。せっかくのチャンスだというのに自分から言うのは癪に思えてならない。
 言えるわけがない。奴があの女を褒めるのが許せないだなんて。
 一番許せないのは奴が私の気持ちに気づいてないということだ。直球で話しても冗談として返される。ありえないだろそれは。
 いい加減に気づけ、バカ野郎!
 私は側にあったクッションを奴に投げつけた。(1128文字)

実は主人公も当て馬でした、なラブコメ。ちなみに、芹沢さんが「奴」と付き合ったのは以前主人公と奴が仲良く歩いていたのを目撃したから。

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プロフィール
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性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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