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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2014

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野外のコンサート会場で振り付けの再確認をしていると、俺の鼻がひく、と動いた。
 甘辛い匂いにつられ目を泳がす。客席の奥に行きつけの店の主人の姿を見つけ俺は確信した。
 今店の主人がスタッフに渡している鍋。あの中には豚バラのコーラ煮が入っている。間違いない。あれは俺への差し入れだ。あの店のコーラ煮は絶品で、俺はそれを食べるためだけに足を運んでいた。
 俺は鍋の中を想像する。肉にうっすら被る油が朝の光に混ざってギラッギラに輝いている姿。
 嗚呼駄目だ。俺の口の中は唾でいっぱいだ。
 食いてぇ。食いてえ食いてぇ食いてえ食いてぇ、むしろ食わせろーーーーっつ!
 口から洪水が起こるまえに俺は舞台を降り、鍋に向かって突進していた。30メートル先にいるスタッフから鍋をぶん盗り蓋をぽいっと投げる。思い描いていた風景の中に手を突っ込み、肉の塊を掴んだ。滴る液体ごとほおばる。
 口の中に広がるのは肉のふんわりとした柔らかさと甘辛いタレのハーモニー。
 今日はいつもよりタレが染みている。予想を上まる旨さに俺の顔もトロットロだ。
 美味しい。美味しすぎて死にそうだ。
 いやこのまま死んじゃいたい。
 神様、どうか俺を天国へ連れてってください!
 なーんて思った次の瞬間、不幸は訪れた。
 鈍い音と同時に頭が割れる。鍋がすとんと床に落ち、俺はあいた両手で頭を抱え込む。見上げれば鍋蓋を持ったマネージャーが仁王立ちしていた。
「アイドルがそんな卑しい食べ方をするな!」
「だからって叩くことはないだろっ」
「あらぁ? 顔はよけてやったんだからここは感謝する所じゃないの? 今食べたらその衣装がはち切れるわよ」
 そう言ってマネージャはもう一度俺の頭をごん、と叩く。
 狂気のような善意は俺の頭を見事四等分にしてくれた。

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プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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