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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0424
 競馬場の喫煙室で一服してると、出口に妻が立っていた。頬が引きつっている。当然だ。俺は休日出勤と嘘をついてここにいるんだから。
「賭けが過ぎるからしばらく競馬は控えてって言ったよね?」
「いや、気が付いたら足がふらふらと」
「嘘つけ! いい加減止めろ!」
「って言われても馬は俺の生活の一部で――あ、せっかく来たならおまえも一度やってみれば? 馬の楽しさが分かるって」
「……わかった。じゃあ一つ、賭けをしようか」
「は?」
「次のレース、一着の馬を当てたら相手の言う事を何でも聞く。これでどう?」
 その条件に俺は乗った。勝った時に言うのは決まっている。相手はギャンブルとは無縁の人間、負ける気がしなかった。
 俺は競馬新聞を睨む。色々考えた末、手堅い一番人気でいくことにした。配当金は雀の涙ほどだが、要は当たればいいこと。
 俺が券売機に向かうと、先にいた妻に券を渡された。
「もし私が勝ったらその券自由に使って。そのかわり競馬とは縁を切ってね」
 俺は彼女の買った馬券を見る。単勝大穴狙いで投資額は一万円。勝てば万馬券だが無茶にもほどがないか?
 俺は首をかしげつつ、券を買い会場へ向かう。ファンファーレが鳴りひびきゲートが開かれた。
 トップを走るのは彼女が賭けた馬。だがこれは大逃げ、予想通り第二コーナー手前で失速する。
 一方俺の賭けた馬は先行で馬群の前方にいた。読み通り第三コーナーを回った所で先頭の馬を捉える。
 そして第四コーナーで事件は起きた。
 先頭を走っていた馬がぬかるみにはまったのだ。バランスを崩して他の馬に体当たりする――俺の賭けた馬に。
 何頭かが将棋倒しになったあと、列の後半を走っていた馬が差しに入った。
 大逃げした馬が最後のスパートをかける。空に舞うは紙吹雪。阿鼻叫喚とも呼べる声。喧騒の中隣りにいた妻が思ったより大したことないのねと呟いている。
 俺は手切れ金を手にしたまま、しばらく動けずにいた。(821文字) 

いわゆるひとつのビギナーズラック。

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プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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