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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0423
 夏休みが明けた九月、校門で光に会った。
 光は幼馴染の男の子。今年の夏はアメリカへホームステイに行っていた。会うのはひと月ぶりだ。
「あさひちゃん、おはよう」
 光はぱっと見、夏休み前と何ら変わってなかった。
 でもなんでだろう。心なしか見下ろされたような。
 最初は目の錯覚と思った。けど光が私の横に並んだことでそれは違うと気づく。夏休み前は同じだった肩の高さが微妙に違ったからだ。
 私は校舎に入ると教室に向かわず、光を連れて保健室へ向かった。お互いの身長を計る。私一五三センチ、光は……一五五センチ?
「やった、あさひちゃんに勝った」
 私に万年チビと呼ばれていた光がガッツポーズをした。追い抜かれた私は嘘、と叫んだ。生まれてから今まで一度も光に負けたことなかったのに。
 そこへ保健の先生があらあら、という顔をしてやってきた。
「せんせー、僕身長伸びたの。あさひちゃんに勝ったんだよ!」
 嬉しそうに話す光に先生はにっこりと笑った。
「そうね。男の子はこれからが成長期だから。このぶんだとあと10センチは伸びるかしら」
「やったー!」
 大喜びの光に更に私も問いかける。
「私は? 私も身長伸びる?」
「女の子も伸びるけど男の子ほどではないかな。体は徐々に丸みを帯びてふっくらしてくるけど」
 それって体重が増えるってこと?
「そんなのイヤあ」
 私は思わずしゃがみこむ。光には絶対負けられなかった。勉強も運動も、遊びひとつとってもそう。私は光の前にいなきゃいけないのに。
『光に何かあった時は、あさひちゃんが守ってあげてね』
 私は光のおばあちゃんとの約束を思い出す。小さい頃、泣き虫だった光を心配しておばあちゃんは私を頼った。光のおばあちゃんはその次の日に病気で亡くなった。
 どうしよう。このままじゃ光を守れなくなる。
 おばあちゃん、私どうしたらいい? 
 私が途方に暮れていると肩を叩かれた。振り向いた先に光がいる。
「今まで守ってもらってばかりだったけど、これからは僕があさひちゃんを守ってあげるからね」
 光の言葉は頼もしかった。
 でも私にとってそれは一番聞きたくなかった言葉。
「イヤ、それだけは絶対イヤ!」
 私は全力で拒否する。そのあと大声をあげて泣いた。(944文字)

守る側が守られる側に変わった瞬間に無邪気な子供心を添えて。

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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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