忍者ブログ
もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

1123
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2013

0525
 私が事務室に入ると、社長がカップラーメンをすすっていた。
「社長、今日『も』ラーメンですか?」 
「今日は限定のとんこつ味にしてみた」
「というか、昨日の昼も夜もラーメンだったじゃないですか。栄養偏りません?」
「いや。ラーメンばかり食べているわけじゃない。野菜もちゃんと取っているぞ。昨日の昼は八宝菜も食べたし、夜はタンメンだ。今朝は青椒肉絲を作ってきたぞ。
 知っているか? ピーマンは繊維を断つように切ってチンしてから炒めると苦みが消えるんだ。君も一度試してみるがいい」 
「はいはい」
 私は適当に相づちを打ってから自分の席についた。パソコンを起動し本社からのデーターが届いていることを確認する。それを指定された書式に打ち込むのが私の仕事。
 私は気分を上げるため、音楽を聞くことにした。鍵付きの引き出しにあったCDを出そうとして――あれ? とつぶやく。  
「社長。引き出しにあったCD知りません?」
「さぁ?」
「おかしいなぁ……」
 私は首をかしげる。確かに鍵かけて入れたはずなのに。
「そういえば、早番の社員が来た時、この部屋の鍵がかかってなかったって言ってたなぁ。でも金庫も荒らされてないし、単純に俺が昨日かけ忘れたのかなぁ、と思ってたんだけど」
「やだ。防犯カメラちゃんと確認してくださいよ! 泥棒だったらどうするんですか」
 私は引き出しの中をまんべんなく調べ、なくなった物がないか調べた。念のため、金庫の中も確認する。見る限りなくなったのは私のCDだけ、のようだ。私の中で泥棒に対する怒りがふつふつと湧いてくる。
 一方、社長はラーメン片手にモニターを見ていた。
 録画した防犯カメラの映像を昨日退社した時間に戻す。そこから二倍速で送ると三分後に変化が起きた。四分割画面の左下、事務室前の廊下で怪しげな覆面男が扉の前で何かしている。錠前破りだ。
「ほーらー、やっぱり泥棒じゃないですか! 警察呼んでください!」
「別に呼んでもいいけどさ。CDって、もしかして『持出厳禁』って大きなラベル貼ってあったやつ?」
「そうです」
「だったら警察呼ばなくてもいいんじゃない?」
「そんな!」
「だって、あんなの盗んでも得にならないし。あれ君の趣味でしょ? ヘビロテして飽きたりしない?」
「社長のラーメンと一緒にしないで下さい! 私にとっては重要なんです。あれ聞かないと調子でないんです!」
 あれはもう廃番なのに。中古屋でようやく見つけたレアものなのに。
 私はラベルの裏に隠されたイケメンたちの抱擁を思い出す。濃厚な体の触れ合いが収録されたそれは、私達腐女子の中でも人気の高い作品だった。
「あんまり変わらないと思うんだけどねぇ」
 そう言って社長がとんこつスープをすする。頭にきた私は社長の足を思いっきり蹴り飛ばした。(1170文字)

同じころ、某所では泥棒が憤死してましたとさ。CDを売り飛ばすまで頭が回ったかどうかは、誰も知らず。

拍手[0回]

PR
プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
忍者ブログ [PR]
* Template by TMP