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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0524
 夜が明ける前に私は目を覚ました。
 最近は時計のアラームがなくてもこの時間になると目が開く。空も薄暗いこの時間、私は体を半回転し隣りにいる子どもの寝顔を眺めた。静かな寝息を聞くと、自然と口元から笑みがこぼれる。布団の海から子供の手をすくい、両手でそっと包み込んだ。小さな体から熱いものが伝わる。
 初めて子供と手を繋いだ時、体温の高さに私は驚いた。最初は熱でもあるのかと慌てたけど、子供の平熱は大人のそれよりも高いのだと聞いてほっとした――そんな記憶はまだ新しい。
 押し寄せてくる波は温かくて、少しくすぐったくて、でもとても心地よい。空っぽだった心に優しさが満ちていく。きっと、これが幸せというものなんだろう。
 このまま、ここに留まれたらいいのに――私は思う。けど私は立ち上がらなければならなかった。愛しき人の夢を守るため、私は現実を背負う。私は行かなければならない。あの喧騒とした森の中へ――
 私は簡単に食事を済ませ身支度を整える。すると寝室の扉が開いた。ベッドから起きた子供が私の所へ向かった。足にすりよる。
「もう行っちゃうの?」
 無垢な瞳に射ぬかれ、私は困ってしまった。今にも泣きそうな、そんな顔をされたら、せっかくの決心も揺れてしまう。
 私は子供の頭をそっとなでた。
「帰ってきたらまた一緒に遊ぼう」
「本当に? 約束だよ」
 私は小指を絡ませ、誓った。そのあとでぎゅうと抱きしめる。
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
 あどけない微笑みを背に私は外へ飛び出した。まだ日は昇ったばかり。湿った大地に風が吹き抜ける。その爽やかさに季節の変わり目を感じた。
「じゃ、今日もふんばりますか」
 私はぐるんと腕をまわすと、駅に向かう道を歩き始めた。(737文字)


子供を持つ親が後ろ髪引かれるように出勤する姿。

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プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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