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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0501
 孝太郎さんが帰るというので私たちは家の外まで見送ることにした。
 孝太郎さんは旦那の従兄弟だ。子供の頃から旦那と仲が良い。この間まで海外で仕事をしていて、旦那とは実に十年ぶりの再会だった。
「ごちそうになりました」
「大したお構いもできずに……その、いろいろごめんね」
 帰り際、私は孝太郎さんに謝る。孝太郎さんは笑顔で許してくれた。本当、心の広い人だなと思う。
「……じゃあ、駅まで送ってくるから」
 義妹の美也ちゃんがそう言うと、横から旦那が口を挟んだ。
「送るんなら俺がいこうか? 積もる話もある――」
 私は旦那の足を思いっきり踏みつけた。どうぞごゆっくり、と行って二人を送り出す。
「ったー、何すんだよ!」
「ここは二人っきりにさせてあげなさいよ」
「なんで?」
「なんでって、そういうことなの! いい加減気付け」 
 ここまで言って、旦那はやっと気付いたらしい。自分の妹と従兄弟、二人の背中を交互に見ながら目を白黒させる。
「あいつら付き合ってるの?」
 私はため息をついた。この人が鈍感なのは知っていたけど、ここまでくると重症だ。
「おまえは知ってたのか?」
「もちろん」
「おまえらは?」
 旦那は後ろにいた自分の弟妹に聞く。彼らの答えはもちろんイエス。
「姉ちゃん、昔から孝ちゃんになついてたし」
「孝ちゃんスーツ着てたよね。私『娘さんを下さい』って話になるかと思った」
「俺も」
 顔を見合わせる彼らに私はうんうんと頷く。やはり二人はちゃんと空気を読めていた。
 それなのにこの馬鹿旦那、家を訪れた従兄弟を両親の前で拉致るとは、一体どういう神経してるのやら。
 昔のアルバムを出して語る、思い出の場所へ連れまわす。お互いの旧友を呼んで酒盛りまで始める――
 普段は私が旦那の暴走を止める役だけど、買い物の帰りに車が故障してしまい、家に戻った時は既に手遅れだった。自分勝手な息子に家族は匙を投げ、美也ちゃんは居間でふつふつと怒りをたぎらせていた。
「とにもかくも、今日のあんたはKYすぎ。恥ずかしくて仕方なかったわよ」
 私は旦那を小突く。孝太郎さんは日を改めて挨拶に来ることになったけど――本当二人には申し訳ない気持ちで一杯だ。
 旦那はというと未だ信じられなさそうな顔をしている。
「あいつらいつの間に――つうか、いとこ同士の結婚ってアリなわけ? え? 大丈夫なのか?」
 初歩的な質問に頭が痛くなる。足元で三歳の娘がけーわいってなに、と聞いてきたので私は答えた。
「KYってのは空気を読めないバカのこと。あなたはお父さんみたくならなくていいからね」(1087文字)

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プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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