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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0607
 私と佳奈は大学時代からの付き合いだ。佳奈が私の仕事場の近くで働き始めてからは一緒にランチをするようになっていた。会話の肴は専ら佳奈の彼氏の愚痴だ。時間にルーズだとか、最近は全然お洒落じゃないとか。私は佳奈の連続口撃を適当な相づちでかわすのが定番となっていた。
「もうさ、付き合って十年以上たつとお互い空気なんだよね。いてもいなくてもどっちでもいいっていうか」
「んじゃ別れちゃえば? そんな男つまびいちゃえ」
「そうよね。今日こそ言ってやるわ。こんな関係もう終わらせてやる、って」
 その時、佳奈の携帯が鳴った。どうやら仕事の呼び出しを受けたらしい。
「んじゃ別れたら連絡するわー」
 意気揚々と店を出ていく佳奈に私は頑張れぇとエールを送る。しばらくしてあの、と後ろで聞き覚えのある声がした。振り返ると、後ろの席に社の後輩がいた。どうやら彼女もここでランチしていたらしい。
「二人のお話が聞こえちゃったんですけど……それでいいんでしょうか?」
「何が?」
「そんな簡単に別れろ、なんて言っちゃって――本当に別れちゃったらどうするんですか?」
「ああ、それだけは絶対にないから」
 私ははっきりと断言した。佳奈はいつだってそう。もう限界だあんな男とはもう別れてやる―と言っときながら、明日になるとけろっとした顔でそんなこと言ったっけ? と言う。佳奈は相手の文句を言うだけ言ってすぱっと忘れる性質なのだ。
 まぁ友達になった最初の頃は毎度の別れます宣言に私もオロオロしてたわけだけど。それが長く続くといい加減慣れてくる。そのうち私も誰か紹介しようか、なんて冗談も言えるようになっていた。
 私は後輩に大丈夫だからとなだめすかし、仕事場に戻る。幾つかの打ち合わせを終え、報告書を作成していると佳奈から電話が来た。
「菜摘の言うとおり、恋人関係終わらせたから」
 突然の宣言に私はどきりとする。一瞬後輩の言葉が頭をよぎった。
「え…………っと? それって?」
「彼氏もこんな関係うんざりしてたんだって。だからすっぱり終了!」
 うわ、それって私の言葉が原因ですか? 後押ししちゃったんですか? 私の額に嫌な汗が出てくる。まさか、こんな展開思ってもみなかった。
「それでね、菜摘、これからのことなんだけど……」
「うん」私はごくりと唾をのむ。
「実はね」
「うん」
「今度から私達夫婦になりまーっす」
「はぁぁあ?」
「もう婚姻届にサインはしたんだ。明日の朝イチで市役所に届けてくるから~用件はそれだけ。じゃあ、まったねー」
 電話が切れてからしばらくの間、私は呆然としていた。そりゃ付き合い長いわけだし、そんな話が出てもおかしくないって思ってたけど。あまりにも展開早すぎないか? つうか私、おめでとうの一言を言い忘れたじゃないか!
「……ま、いっか」
 私は小さく肩をすくめる。携帯をしまうと、コピー機の前にいた後輩に声をかけた。(1212文字)

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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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