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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0409
「楽しそうだね、いつもそうやって遊んでいるの?」
 穏やかな声が私の耳に届く。
 二階の手前の部屋、扉の向こうに沢井の背中があった。私は彼の隣りに立って同じ景色を見る。目の前にあるのは真っ白な壁。もちろんそこには誰もいない。
「そうか、ここは君の部屋なんだね。うん、素敵な部屋だ」沢井はにっこりと微笑む。
 ああ、やっぱりそこに『居る』んですか?
 私が目で訴えると沢井は小さく頷いた。
 沢井の説明によると、目の前にいるのは五歳位の男の子。壁に突進してぶつかる遊びをしていたらしい。今はこれがマイブームなのだとか。
 正直に言うと私はそういった類が苦手だった。でも沢井と一緒にいるようになってそれは克服しつつある。
 動揺したり窮地に追い込まれた時、沢井の声を聞くと私の心は落ち着く。穏やかな低音は私にとって唯一の特効薬なのだ。
 とりあえず足音と家鳴りの原因は小さな幽霊の仕業だということは分かった。
 でもこの後はどうすればいいんだ? やっぱりお祓いとか必要なのかしら?
 私が考えあぐねていると沢井はこの子の両親をここに呼んであげるといいんじゃないかな、と言った。
「彼は留守番しているんだ。親の帰りをずっと待っているんだよ」
 なるほど。それなら不動産屋に問い合わせれば両親の連絡先が分かるかもしれない。
 私は先日不動産屋からもらった名刺を探した。
「好きな動物は? 食べ物は何が好き?」沢井は男の子に再び話しかける。たわいのない会話は傍からみたら異様な光景だけど、沢井の笑顔にそれはかき消される。
 私は彼の視線の先に小さな男の子の姿を見た気がした。(682文字)

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プロフィール
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性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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