もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。
目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)
2013
この間俺は親父と派手に喧嘩をした。原因は俺の進路問題だ。先日学校から渡された進路希望用紙に俺は白紙のまま提出した。後日指導室に呼ばれ、延々と説教混じりの話を聞かされたが、俺は「じゃ、先生が適当に決めて」と言って突っぱねたのである。
それを聞き、俺の将来を心配した担任は親に連絡した。電話を受けたのがたまたま親父だったのも運が悪かったとしか言いようがない。
珍しく家族が揃った夕飯の席でお前は何になりたいんだ、と親父に聞かれた。俺は親父のような人間じゃなければ何でも、と答えた。親父みたくなりたくない――それは俺の本心からの願いだった。まぁ、そのあと人格を否定した親父に思いっきりグーで殴られたわけだけど。
そういうわけで今、俺と親父は冷戦状態に入っている。この時間はとっくに家に帰って部屋でゲームをしているのだが、残念なことに今日から親父の勤めている工場は季節外れの夏休みに入った。家に帰ればあの仏頂面が待っている。顔を合わせたらきっと進路についてあれやこれやと話をしなきゃならない。でもどう話合っても平行線のままなのは分かりきったこと。だからここで時間を潰すしかなかった。
台風の翌日は暑いと聞くけど、今日は涼しい風が吹いていた。連日の最高気温が三十五度を超えていただけに、五度下がっただけでも涼しく感じる。慣れというものは恐ろしい。俺はコンビニで買ったペットボトルに口をつけた。炭酸の粒が口いっぱいに広がって脳を刺激する。公園を走り回るガキどもは体力の温存と言うものを知らない。遊びに全力投球だ。
最初はぼんやりとその様子を見ていた俺だがそのうち、砂場で遊んでいた一人のガキに注目した。ガキは最初、平日休みらしき父親と砂の山を作っていた。父親はトンネルを作ろうか、水でも流そうかと言うけど、ガキは父親の言葉を無視し完成直前の山をあっけなく踏みつぶした。そのあとブランコにむかって一目散に走る。ぶんぶん揺らしたかと思ったら滑り台をあっというまに逆走し、ジャングルジムの頂上を目指す。
父親は子供と遊びなれていないのだろうか。子供の一つ一つの行動に驚き目を泳がせていた。ちょっと走るだけで転ぶから、と大きな声を上げている。他の子を押しのけ割り込む姿を見て、止めなさいと叫んでは近くにいる母親に頭を下げている。ガキはガキで人の気を引きたくてやったことなのだろう。でも父親そんなガキの気持ちを知らない。ただ怒鳴っているだけだ。俺は思わず苦笑した。
そんなの、放っておけばいいのに。
俺は心の中でそう思う。子供なんて転べば痛い事を学ぶし、泣かれたら相手が傷ついたことを知る。順番を守らなければ自分が嫌われることを学ぶ。自分より年上の子には叶わない。でも下の子には優しくしなきゃいけない。
俺にとって公園はそういう所だった。基本だけ教えれば後は実戦で学んでいくしかない。そんな場所。そう教え込まれたのは、母が子供より井戸端会議に夢中だったせいもある。母は母で、育児に参加しなかった親父へのストレスを発散させていたのかもしれない。親父は常に仕事を優先させていた。そのおかげで今の暮らしができているのは分かっているけど、今までの俺の人生は楽しくも幸せでもなかった。むしろ諦めることが多かった人生だったと思う。
親父のような人間には絶対にならない。それは俺の誓いでもあった。だからどんなことがあろうともこの決意を覆すつもりはない。
まぁ、そんなことはどうでもいい。今の俺には母がパートから帰ってくるまでの時間を何でどう潰すかが問題だ。
俺は携帯で時間を確認する。そろそろケンタがこのあたりの道を通るだろう。ジュースでも奢って、適当な時間まであいつの家にでも転がり込もうか。
ベンチから立ち上がった俺は再びコンビニを目指して歩いて行く。それは空がまだどこまでも青かった、夏の終わりのことだった。
それを聞き、俺の将来を心配した担任は親に連絡した。電話を受けたのがたまたま親父だったのも運が悪かったとしか言いようがない。
珍しく家族が揃った夕飯の席でお前は何になりたいんだ、と親父に聞かれた。俺は親父のような人間じゃなければ何でも、と答えた。親父みたくなりたくない――それは俺の本心からの願いだった。まぁ、そのあと人格を否定した親父に思いっきりグーで殴られたわけだけど。
そういうわけで今、俺と親父は冷戦状態に入っている。この時間はとっくに家に帰って部屋でゲームをしているのだが、残念なことに今日から親父の勤めている工場は季節外れの夏休みに入った。家に帰ればあの仏頂面が待っている。顔を合わせたらきっと進路についてあれやこれやと話をしなきゃならない。でもどう話合っても平行線のままなのは分かりきったこと。だからここで時間を潰すしかなかった。
台風の翌日は暑いと聞くけど、今日は涼しい風が吹いていた。連日の最高気温が三十五度を超えていただけに、五度下がっただけでも涼しく感じる。慣れというものは恐ろしい。俺はコンビニで買ったペットボトルに口をつけた。炭酸の粒が口いっぱいに広がって脳を刺激する。公園を走り回るガキどもは体力の温存と言うものを知らない。遊びに全力投球だ。
最初はぼんやりとその様子を見ていた俺だがそのうち、砂場で遊んでいた一人のガキに注目した。ガキは最初、平日休みらしき父親と砂の山を作っていた。父親はトンネルを作ろうか、水でも流そうかと言うけど、ガキは父親の言葉を無視し完成直前の山をあっけなく踏みつぶした。そのあとブランコにむかって一目散に走る。ぶんぶん揺らしたかと思ったら滑り台をあっというまに逆走し、ジャングルジムの頂上を目指す。
父親は子供と遊びなれていないのだろうか。子供の一つ一つの行動に驚き目を泳がせていた。ちょっと走るだけで転ぶから、と大きな声を上げている。他の子を押しのけ割り込む姿を見て、止めなさいと叫んでは近くにいる母親に頭を下げている。ガキはガキで人の気を引きたくてやったことなのだろう。でも父親そんなガキの気持ちを知らない。ただ怒鳴っているだけだ。俺は思わず苦笑した。
そんなの、放っておけばいいのに。
俺は心の中でそう思う。子供なんて転べば痛い事を学ぶし、泣かれたら相手が傷ついたことを知る。順番を守らなければ自分が嫌われることを学ぶ。自分より年上の子には叶わない。でも下の子には優しくしなきゃいけない。
俺にとって公園はそういう所だった。基本だけ教えれば後は実戦で学んでいくしかない。そんな場所。そう教え込まれたのは、母が子供より井戸端会議に夢中だったせいもある。母は母で、育児に参加しなかった親父へのストレスを発散させていたのかもしれない。親父は常に仕事を優先させていた。そのおかげで今の暮らしができているのは分かっているけど、今までの俺の人生は楽しくも幸せでもなかった。むしろ諦めることが多かった人生だったと思う。
親父のような人間には絶対にならない。それは俺の誓いでもあった。だからどんなことがあろうともこの決意を覆すつもりはない。
まぁ、そんなことはどうでもいい。今の俺には母がパートから帰ってくるまでの時間を何でどう潰すかが問題だ。
俺は携帯で時間を確認する。そろそろケンタがこのあたりの道を通るだろう。ジュースでも奢って、適当な時間まであいつの家にでも転がり込もうか。
ベンチから立ち上がった俺は再びコンビニを目指して歩いて行く。それは空がまだどこまでも青かった、夏の終わりのことだった。
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プロフィール
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和
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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