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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0820
俺はモデルとなる相手に、次は自由にしてていいと伝えたあとで、喋っても構わないと付け加える。本当は静かな方が集中できるのだが、相手が窮屈にしているとそう言わざるを得ない。
 俺は一度目を閉じ深呼吸をする。それからゆっくりと目を開ける。最初に飛び込んだのは戦慄の赤。俺は赤鉛筆を手にすると相手からにじみ出るオーラをひとつひとつすくい出し紙に叩きつけた。輪郭のみを写しとり表情はあえて飛ばす。そのかわり体のしなりや筋肉の動きを線の太さで表現した。無防備に晒された足は細く柔らかく、握った拳は強く大胆に。そうすることで作品に更なる深みが加わる。
 鉛筆を走らせながら、俺は相手の話を聞いていた。内容は――俺と噂になっているクラスメイトのことだ。付き合っているの、と問われ、俺は少しだけ考える。相手の顔を一度伺ったあとで、俺は答えを出した。一瞬だけ鉛筆の動きが止まる。
 目や耳から入ってくる情報は雑多で嘘と真実が混在する。それは発信する側も同様で――それに引きずられると俺の手は動かない。余計な感情に振り回されて何も描けなくなってしまうのだ。そういう時、俺は本能に染まれと呪文をかける。そう、自分の直感だけを頼れと言い聞かせるのだ。
 下書きをひととおり終えた所で時を知らせるベルが鳴った。俺は赤鉛筆を置くと自分の作品を改めて見る。無言で書いた時よりも上手く描けた気がして――俺は思わず苦笑した。スケッチブックをくるりと翻し、相手の反応を見る。その表情に確かな手ごたえを感じた。俺が受け止めた感情は確かにそれで合っているのかもしれない。
 俺は相手の逆鱗に触れることを知りながらも、その名を口にした。これは嫉妬ではないか、と。案の定、向こうはびくりと体を動かした。憎悪の目が俺に降り注ぐ。その馬鹿正直さが俺の悪意に発車をかけた。殺気を感じつつもよかったらあげるけど? と挑発する。相手の拳が震えていた。このまま殴り飛ばされるかもしれないと思い、俺は身構える。だがそれは杞憂に終わった。第三者の介入があったからだ。
 我ながら愚かなことをしたと思う。本当に嫉妬に狂っていたのは自分の方なのに。
 俺はひとつため息をつくと、描いた絵に手をかける。このまま破ってしまいたかった。でもそれができない。そんな自分が悔しい。結局俺はスケッチブックを閉じてその場を離れるのが精いっぱいだったのだ。


今日はどーにも書けなくて、前書いた話の別視点でごまかしてしまったorz 以前も同じことしたので「俺」が誰なのか分かる人にはわかる話かなぁ……

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プロフィール
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女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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