もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。
目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)
2014
「サクちゃんに質問です。親友の恋人を好きになってしまった場合、貴方はどっち取りますか? 好きな人? それとも親友?」
坂道の途中で話を振られて私はどきりとした。
「な、何を急に」
「例えばの話だって。サクちゃんはどっちを取る?」
コバの屈託のない顔に私は本気で困ってしまう。
どっち――って。
私は、私は……。
「何の話をしてるんだ?」
迷っている私の後ろで低い声が響く。私は思わず肩を揺らした。口元に手を当てて、叫びたい気持ちを必死で堪える。その隣でああカッちゃん、とコバが言う。
「あのね。友達の恋人好きになったら恋と友情、どっちを取るかって話してたの」
「ふーん」
カッちゃん先輩は友達と私を交互に見る。ひょっこりと現れた先輩と目が合いそうになって――咄嗟に私はうつむいた。
先輩と目が合うたびに私の脳みそは沸騰する。ドロドロの液体になって思考回路が停止してしまう。心臓がバクバクして、今にも破裂しそうで。なのに表情は緩みっぱなしで。
「コバはどっち?」
「私は友達かなぁ。身を引いちゃうかも」
「嘘つけぇ。おまえは完全なる肉食だ。俺に告った時も同級生出し抜いて襲いかかってきたじゃんか。だよなぁ?」
先輩に同意を求められ、私は俯いたまま小さく頷く。カッちゃん先輩は男女かまわず慕われている。面倒見が良くて特に後輩からは今も熱い視線を投げられる位だ。先輩の争奪戦は熾烈でその勝者となったのがコバである。
私もとてもいい先輩だと最初は思った。モテすぎる人だから間違って恋愛対象になったらと大変だろうなぁ、そういうの自分には無理だなぁ、と。
だから今の展開に私はひどく困惑している。まさか、まさかとは思っていたけど。
しばらくはこういったのから避けたかった。なのに――どうしてこうなっちゃうのよ。ついこの間、恋と友達をいっぺんに失ったばかりじゃない。
私は苦い過去をぐるぐるとさせる。そうこうしている間に話題は方向を変えた。
「これから本屋寄るんだけど、行く?」
「私も一緒に行ってもいい?」
「もちろん。よかったら柵山も一緒にどう?」
「私は……いいです。どうぞ二人でごゆっくり」
感情を必死で押し殺した私は手を差し出すとどうぞお先に、と誘う。形式上の挨拶だけ済ませて二人と別れた。 二人の背中を見送ったあとで私は絶望感に打ちひしがれる。己の惚れっぽさが恨めしかった。
私の恋はいつもそう。好きになる相手は友達の彼氏とか彼女持ちの男の人。相手の事を考えて何度も身を引こうと思うけど、私は何においても正面突破がデフォ。だから背水の陣で相手にガツンとぶつかって玉砕してしまうんだ。
あーなんでこうなっちゃうんだろう。
本来私はひとのモノを欲しがる人間じゃなかった。目新しいものを見せられていいなと思ったことはあったけど、欲しいなとまでは思わなかった。
やっぱりアレかな。中学からがっつり部活に打ち込んだせいかな? 負ける試合だって感じていても体育会系は諦めない。諦めたら試合終了だって、そんな言葉にずっと捕らわれて。後悔をしたくないのならやっぱり自分の気持ちに素直になるべきだと思っていた。
でも同じことを繰り返しているうちにそれでよかったのかと疑問が浮かぶようになった。自分のしたことが正しいのかわからなくて――
だから一度だけいつもと反対の行動を取ってみたことがある。諦めることで全てが収まるのかと思ったらそれはそれで大変で。結局私の気持ちは友達にバレてものすごーい気まずくなったのだ。
そこで私が学んだのは何が正しいのかは分からないってこと。告っても告らなくても傷つくひとは確実に一人いるんだってこと。
今度私は誰を傷つけるのだろう。私? コバ? それとも――
ああ、こんなのはもう嫌っ。何もかもふっ飛ばしたい。
私はもろもろの感情を目の前にある坂道にぶつけた。わあああっ、と大声を上げて全力疾走する。通りすがりのババアに白い目で見られたけど完全に無視した。
坂道の途中で話を振られて私はどきりとした。
「な、何を急に」
「例えばの話だって。サクちゃんはどっちを取る?」
コバの屈託のない顔に私は本気で困ってしまう。
どっち――って。
私は、私は……。
「何の話をしてるんだ?」
迷っている私の後ろで低い声が響く。私は思わず肩を揺らした。口元に手を当てて、叫びたい気持ちを必死で堪える。その隣でああカッちゃん、とコバが言う。
「あのね。友達の恋人好きになったら恋と友情、どっちを取るかって話してたの」
「ふーん」
カッちゃん先輩は友達と私を交互に見る。ひょっこりと現れた先輩と目が合いそうになって――咄嗟に私はうつむいた。
先輩と目が合うたびに私の脳みそは沸騰する。ドロドロの液体になって思考回路が停止してしまう。心臓がバクバクして、今にも破裂しそうで。なのに表情は緩みっぱなしで。
「コバはどっち?」
「私は友達かなぁ。身を引いちゃうかも」
「嘘つけぇ。おまえは完全なる肉食だ。俺に告った時も同級生出し抜いて襲いかかってきたじゃんか。だよなぁ?」
先輩に同意を求められ、私は俯いたまま小さく頷く。カッちゃん先輩は男女かまわず慕われている。面倒見が良くて特に後輩からは今も熱い視線を投げられる位だ。先輩の争奪戦は熾烈でその勝者となったのがコバである。
私もとてもいい先輩だと最初は思った。モテすぎる人だから間違って恋愛対象になったらと大変だろうなぁ、そういうの自分には無理だなぁ、と。
だから今の展開に私はひどく困惑している。まさか、まさかとは思っていたけど。
しばらくはこういったのから避けたかった。なのに――どうしてこうなっちゃうのよ。ついこの間、恋と友達をいっぺんに失ったばかりじゃない。
私は苦い過去をぐるぐるとさせる。そうこうしている間に話題は方向を変えた。
「これから本屋寄るんだけど、行く?」
「私も一緒に行ってもいい?」
「もちろん。よかったら柵山も一緒にどう?」
「私は……いいです。どうぞ二人でごゆっくり」
感情を必死で押し殺した私は手を差し出すとどうぞお先に、と誘う。形式上の挨拶だけ済ませて二人と別れた。 二人の背中を見送ったあとで私は絶望感に打ちひしがれる。己の惚れっぽさが恨めしかった。
私の恋はいつもそう。好きになる相手は友達の彼氏とか彼女持ちの男の人。相手の事を考えて何度も身を引こうと思うけど、私は何においても正面突破がデフォ。だから背水の陣で相手にガツンとぶつかって玉砕してしまうんだ。
あーなんでこうなっちゃうんだろう。
本来私はひとのモノを欲しがる人間じゃなかった。目新しいものを見せられていいなと思ったことはあったけど、欲しいなとまでは思わなかった。
やっぱりアレかな。中学からがっつり部活に打ち込んだせいかな? 負ける試合だって感じていても体育会系は諦めない。諦めたら試合終了だって、そんな言葉にずっと捕らわれて。後悔をしたくないのならやっぱり自分の気持ちに素直になるべきだと思っていた。
でも同じことを繰り返しているうちにそれでよかったのかと疑問が浮かぶようになった。自分のしたことが正しいのかわからなくて――
だから一度だけいつもと反対の行動を取ってみたことがある。諦めることで全てが収まるのかと思ったらそれはそれで大変で。結局私の気持ちは友達にバレてものすごーい気まずくなったのだ。
そこで私が学んだのは何が正しいのかは分からないってこと。告っても告らなくても傷つくひとは確実に一人いるんだってこと。
今度私は誰を傷つけるのだろう。私? コバ? それとも――
ああ、こんなのはもう嫌っ。何もかもふっ飛ばしたい。
私はもろもろの感情を目の前にある坂道にぶつけた。わあああっ、と大声を上げて全力疾走する。通りすがりのババアに白い目で見られたけど完全に無視した。
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プロフィール
HN:
和
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性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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