もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。
目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)
2013
今年の文化祭、うちのクラスは演劇をすることになった。演目はロミオとジュリエットだ。
シェイクスピアの原文は台詞が長く難しい言葉も多い。現代風の砕けた台本もあったけど、原語にこだわったのは先駆けとなる人たちがいたからだ。
去年の文化祭で三年生が演じたリア王は私たちに衝撃を与えた。言葉の意味は分からなくても口調や動きで内容を理解できたし、何より演技している人達が堂々としていた。
私たちもあんな風に演じてみたいね。
その一言からクラスの出し物が決まった。だが現実は甘くなかった。
原語のままの台詞はほぼ全員が覚えられずにいる。そのうち部活だ塾だと理由をつけて練習をさぼる人間が出始めたのだ。
しまいには主役のひとりが(自分で立候補したくせに)出来ない、役を降りたいと言い始めた。
芝居班のぐだぐだぶりに、裏方班も士気を失っていた。舞台の背景はもちろん、衣装も小道具も出来上がらない。
先生は「自分たちで決めたことだから自分たちで何とかしろ」と言うだけだ。
このままだとヤバイ――クラスの誰もが思った頃、私たちのクラスに来客がきた。去年、リア王を演じた先輩だ。
「文化祭でシェイクスピアやるって聞いたから覗きに来たんだ。今年はロミジュリだって?」
「ええ、まぁ」
「どしたの? 元気ないけど」
「その、みんな色々手を焼いてまして」
私は言葉を濁す。
ノリだけで決まった出し物だけど、私達にシェイクスピアは無謀だったのだ。
それを考えると先輩達はすごい。受験でいっぱいいっぱいだったはずなのに彼らは立派に演じきったのだ。
「先輩はあの量の台詞をよく覚えられましたね」
「あー、あれ口パクだったから」
その一言に衝撃が走った。
「あらかじめ録音していた声に合わせて人が動いてたの。あの量の台詞は手に負えないし。そんな時間あったら英単語覚えたほうが有意義だって」
あっけらかんという先輩にその場全員の腰がくだけたのはいうまでもない。(828文字)
このあとクラスの士気は復活し無事カーテンコールを迎えましたとさ。
シェイクスピアの原文は台詞が長く難しい言葉も多い。現代風の砕けた台本もあったけど、原語にこだわったのは先駆けとなる人たちがいたからだ。
去年の文化祭で三年生が演じたリア王は私たちに衝撃を与えた。言葉の意味は分からなくても口調や動きで内容を理解できたし、何より演技している人達が堂々としていた。
私たちもあんな風に演じてみたいね。
その一言からクラスの出し物が決まった。だが現実は甘くなかった。
原語のままの台詞はほぼ全員が覚えられずにいる。そのうち部活だ塾だと理由をつけて練習をさぼる人間が出始めたのだ。
しまいには主役のひとりが(自分で立候補したくせに)出来ない、役を降りたいと言い始めた。
芝居班のぐだぐだぶりに、裏方班も士気を失っていた。舞台の背景はもちろん、衣装も小道具も出来上がらない。
先生は「自分たちで決めたことだから自分たちで何とかしろ」と言うだけだ。
このままだとヤバイ――クラスの誰もが思った頃、私たちのクラスに来客がきた。去年、リア王を演じた先輩だ。
「文化祭でシェイクスピアやるって聞いたから覗きに来たんだ。今年はロミジュリだって?」
「ええ、まぁ」
「どしたの? 元気ないけど」
「その、みんな色々手を焼いてまして」
私は言葉を濁す。
ノリだけで決まった出し物だけど、私達にシェイクスピアは無謀だったのだ。
それを考えると先輩達はすごい。受験でいっぱいいっぱいだったはずなのに彼らは立派に演じきったのだ。
「先輩はあの量の台詞をよく覚えられましたね」
「あー、あれ口パクだったから」
その一言に衝撃が走った。
「あらかじめ録音していた声に合わせて人が動いてたの。あの量の台詞は手に負えないし。そんな時間あったら英単語覚えたほうが有意義だって」
あっけらかんという先輩にその場全員の腰がくだけたのはいうまでもない。(828文字)
このあとクラスの士気は復活し無事カーテンコールを迎えましたとさ。
PR
2013
「私、葛城さんに『もし、明日雨が降ったら二人で映画見にいきませんか?』ってメール送りました!」
さつきの話を聞いた私はなんて無茶なことを、と思う。というのもメールを送った相手、葛城陽一が晴れ男だからだ。
明日は草野球の試合がある。葛城は私の彼氏と草野球のチームを組んでいた。陽一の陽は太陽の陽だというが、それは間違いではない。葛城が試合に出る日はとにかく晴れる。いつぞやは上陸予定だった台風の進路を変えたこともあった。太陽の名を頂いた人間は最強の晴れ男として君臨している。
蛇足になるが明日の天気は快晴だと携帯のひつじも言っていた。
私はさつきにそのことを話す。だが、「大丈夫です」とあっさり返された。私、雨女なんでというその理由もすごい。
「私、昔からここぞと言う場面で雨に遭うんです」
そういいながら彼女は朗らかに笑う。私は苦笑するが、しばらくしてあれ? と思う。
そういえばさつきが入社した年は初日から雨だった。レクや社員旅行も、彼女が参加した年は雨が降っていたような。いや待て。この間うちの部署が計画した花見、あれもさつきを誘っていた。だがそれも嵐で中止になってしまった。まさか。
私はごくりと唾をのむ。同時にさつきの携帯が鳴った。画面を見ていたさつきに満面の笑みが広がる。
「雨が降るのを楽しみにしています、って。きゃーっ」
葛城はどんな気持ちでそのメールを送ったのだろう。もしかしたら鼻で笑っていたかも。明日その鼻がへし折れるかもしれないと思ったら、私も結末が気になってしまった。
空を見上げる。明日は五月晴れか五月雨か? 答えは天上の神のみぞ知る――というところか。
そういえば二人が初めて出会った合コンは晴れだった? 雨だった? 思い出せない自分がもどかしい。あとで彼氏に聞いてみよう。(762文字)
晴れ男と雨女の戦い第1R。さつきは葛城にほぼ一目ぼれ。葛城の気持ちは謎のまま。このタイトル見た時、わらべの「もしも明日が」がふっと浮かんだ自分がいたわ
さつきの話を聞いた私はなんて無茶なことを、と思う。というのもメールを送った相手、葛城陽一が晴れ男だからだ。
明日は草野球の試合がある。葛城は私の彼氏と草野球のチームを組んでいた。陽一の陽は太陽の陽だというが、それは間違いではない。葛城が試合に出る日はとにかく晴れる。いつぞやは上陸予定だった台風の進路を変えたこともあった。太陽の名を頂いた人間は最強の晴れ男として君臨している。
蛇足になるが明日の天気は快晴だと携帯のひつじも言っていた。
私はさつきにそのことを話す。だが、「大丈夫です」とあっさり返された。私、雨女なんでというその理由もすごい。
「私、昔からここぞと言う場面で雨に遭うんです」
そういいながら彼女は朗らかに笑う。私は苦笑するが、しばらくしてあれ? と思う。
そういえばさつきが入社した年は初日から雨だった。レクや社員旅行も、彼女が参加した年は雨が降っていたような。いや待て。この間うちの部署が計画した花見、あれもさつきを誘っていた。だがそれも嵐で中止になってしまった。まさか。
私はごくりと唾をのむ。同時にさつきの携帯が鳴った。画面を見ていたさつきに満面の笑みが広がる。
「雨が降るのを楽しみにしています、って。きゃーっ」
葛城はどんな気持ちでそのメールを送ったのだろう。もしかしたら鼻で笑っていたかも。明日その鼻がへし折れるかもしれないと思ったら、私も結末が気になってしまった。
空を見上げる。明日は五月晴れか五月雨か? 答えは天上の神のみぞ知る――というところか。
そういえば二人が初めて出会った合コンは晴れだった? 雨だった? 思い出せない自分がもどかしい。あとで彼氏に聞いてみよう。(762文字)
晴れ男と雨女の戦い第1R。さつきは葛城にほぼ一目ぼれ。葛城の気持ちは謎のまま。このタイトル見た時、わらべの「もしも明日が」がふっと浮かんだ自分がいたわ
2013
私が希(こいねが)うのはただひとつ。
どうか、私のことは放っておいて。
貴方はとても優しい人。
付き合う前から貴方は私が強がりで臆病者だということを知っていた。
私の身勝手な行動を海のような広さと優しさで包んでくれた。
そんな私が病気を抱えていることを知って、真っ先に飛んで来たね。
「何かあったらいつでも呼んで」と言われて、本当は嬉しかった。でも素直に喜べなかった。
貴方が手を差し伸べたら私はきっと貴方に期待してしまうから。恋焦がれて、きっと同じことを繰り返してしまうから。
私はまだ、貴方を愛しているのだ。
貴方と別れてもう一年も経っているのに、貴方は別の人生を歩んでいるというのに。
滑稽な話でしょ? 私も自分の未練がましさに嫌気がさしてくる。
自分の気持ちにけじめをつけられない、そんな私にはもう失笑しか残らないのかもしれない。
だからお願い。
私の姿を見つけても声をかけないで、目が合ってもすぐ逸らして、そっと私から離れて。
これは想いの深さの違いであって、私が乗り越えなければならない問題だから。
これ以上醜い私は見せたくない。
貴方と過ごした時間は本当に宝物だったから、綺麗な思い出として残しておきたい。
どうか私のことは忘れて。私より新しい家族との時間を大切にして。
私は貴方の幸せを遠くから見守らせて欲しい。それが私の幸せにつながると信じているから。
これは私の最期の願いとして受け取って欲しい。(629文字)
難病を抱えた「私」の遺言のようなもの
どうか、私のことは放っておいて。
貴方はとても優しい人。
付き合う前から貴方は私が強がりで臆病者だということを知っていた。
私の身勝手な行動を海のような広さと優しさで包んでくれた。
そんな私が病気を抱えていることを知って、真っ先に飛んで来たね。
「何かあったらいつでも呼んで」と言われて、本当は嬉しかった。でも素直に喜べなかった。
貴方が手を差し伸べたら私はきっと貴方に期待してしまうから。恋焦がれて、きっと同じことを繰り返してしまうから。
私はまだ、貴方を愛しているのだ。
貴方と別れてもう一年も経っているのに、貴方は別の人生を歩んでいるというのに。
滑稽な話でしょ? 私も自分の未練がましさに嫌気がさしてくる。
自分の気持ちにけじめをつけられない、そんな私にはもう失笑しか残らないのかもしれない。
だからお願い。
私の姿を見つけても声をかけないで、目が合ってもすぐ逸らして、そっと私から離れて。
これは想いの深さの違いであって、私が乗り越えなければならない問題だから。
これ以上醜い私は見せたくない。
貴方と過ごした時間は本当に宝物だったから、綺麗な思い出として残しておきたい。
どうか私のことは忘れて。私より新しい家族との時間を大切にして。
私は貴方の幸せを遠くから見守らせて欲しい。それが私の幸せにつながると信じているから。
これは私の最期の願いとして受け取って欲しい。(629文字)
難病を抱えた「私」の遺言のようなもの
2013
不幸や不運に見舞われると、俺はどうしてここにいるのだろう、と思ってしまう時がある。まさに今日がいい例だ。
終業後、俺は会社から一番近いファストフード店に入った。仕事に忙殺され、昼飯を食いっぱぐれてしまったからだ。
ハンバーガーのセットを頼むと出来上がりまで五分かかります、と店員に言われてしまう。仕方なく俺は空いている席で待つことにした。
不運の種はもうひとつ、俺の隣りに座っていたカップルが持っていた。
最初奴らは同棲して二か月たったね、と惚気ていたのだが、話が進むにつれ言い合いを始めた。
「飲み会の時は三時までに連絡が欲しいって言ってるでしょ! そんな簡単なこともできないの?」
「こっちの仕事終わるのは五時だぜ。それから飲み行こうってなるんだからしょうがないだろ。こっちの付き合いも考えろ」
「夕飯作るこっちの身にもなってよ! 急に飲み会だって言われたら今まで作ってたのは何って思わない? 労力の無駄でしょ? そんな時間あるならもっと有効に使いたいわ」
「何処に労力使ってるって? 手抜き料理ばっかじゃん?」
「手抜きじゃないわよ! じ・た・ん・料理! 作ってもらえるだけありがたいと思え!」
「だったらそっちも家賃半分払え! 学生の身だからって甘えてるんじゃねえ」
それからカップルは化粧が長すぎるだの、服を脱ぎっぱにするなだの、お互いの短所をつつきあい始めた。だが一人身の俺にとってそれは惚気にしか聞こえない。
席に座ってからそろそろ十分が経過しようとしている。頼んだ品物はまだ届かない。くだらない口論は更にヒートアップする。
うざい。こいつらとっとと別れろ。
リ ア 充 爆 発 し や が れ !
俺は番号札を思いっきり床に叩きつけた。(736文字)
人生うまくいかない時に誰でも思うコト
終業後、俺は会社から一番近いファストフード店に入った。仕事に忙殺され、昼飯を食いっぱぐれてしまったからだ。
ハンバーガーのセットを頼むと出来上がりまで五分かかります、と店員に言われてしまう。仕方なく俺は空いている席で待つことにした。
不運の種はもうひとつ、俺の隣りに座っていたカップルが持っていた。
最初奴らは同棲して二か月たったね、と惚気ていたのだが、話が進むにつれ言い合いを始めた。
「飲み会の時は三時までに連絡が欲しいって言ってるでしょ! そんな簡単なこともできないの?」
「こっちの仕事終わるのは五時だぜ。それから飲み行こうってなるんだからしょうがないだろ。こっちの付き合いも考えろ」
「夕飯作るこっちの身にもなってよ! 急に飲み会だって言われたら今まで作ってたのは何って思わない? 労力の無駄でしょ? そんな時間あるならもっと有効に使いたいわ」
「何処に労力使ってるって? 手抜き料理ばっかじゃん?」
「手抜きじゃないわよ! じ・た・ん・料理! 作ってもらえるだけありがたいと思え!」
「だったらそっちも家賃半分払え! 学生の身だからって甘えてるんじゃねえ」
それからカップルは化粧が長すぎるだの、服を脱ぎっぱにするなだの、お互いの短所をつつきあい始めた。だが一人身の俺にとってそれは惚気にしか聞こえない。
席に座ってからそろそろ十分が経過しようとしている。頼んだ品物はまだ届かない。くだらない口論は更にヒートアップする。
うざい。こいつらとっとと別れろ。
リ ア 充 爆 発 し や が れ !
俺は番号札を思いっきり床に叩きつけた。(736文字)
人生うまくいかない時に誰でも思うコト
2013
思春期になると異性のことが何かと気になるようになる、と授業で習った気がする。薄着になる季節はなおさらのことかもしれない。
ここでも野郎どもの品評会が始まっていた。
「長山あたりはどう?」
「顔は可愛いけどセクシーさが足りないな」
「林は?」
「んー、胸でかいけど太りすぎ」
「じゃあ小池」
「『二次元』なんか論外。全然萌えねーって」
一人の発言にどっと笑いが起こる。体操着姿の女子がこちらをいぶかしげに見た。野郎たちが慌てて口を塞ぐ。
ちょうどボールが転がってきたので、審判をしていた僕はそれを拾ってコートに投げ入れた。
得点板のもとへ戻る。なんとなく、視線がネットの向こう側へ移った。女子がバレーボールの試合をしている。目につくのは噂の人物だ。
髪型は痛いツインテール。アニメキャラの限定ハンドタオルを巻いていた。舌っ足らずの声はソプラノを超えて超音波。メガネがずり落ちているのは鼻が低いせいだ。体は扁平で横から見ても女性特有の胸や尻の膨らみが見えない。
女子たちからはウエスト細い、なんて言われているけど、男子からは栄養失調じゃね? という反応しか返って来ない。
彼らの言う「二次元」というのは彼女のアニメオタクをもじったわけでなく、「まるで絵のような肢体」という皮肉がこめられているのだ。
しばらくして授業終了のチャイムが鳴った。
ツインテールが翻る。小池は真っ先にコートを飛び出した。これから着替えて新刊の漫画を買いに行くのだろう。野郎どもは小池を横目に思い出し笑いをしていた。
奴らは知らない。小池の走っている姿が、それこそ絵のような美しさだということを。
小池は小学生にして全国レベルの俊足を持っていた。卒業前に靭帯を損傷しなかったら今頃他校の陸上部で活躍していただろう。
けどそんな過去を知る者はいなかった。この中学に彼女と同じ小学校だった奴はいない。もしかしたら小池自身がそれを望んでこの学校を選んだのかもしれないけど。僕は偶然知ったけど本人にも他人にも言う気はなかった。
小池の背中を見送る。輝きを取り戻している彼女に僕は安堵とは別の感情を抱いていることに気づき始めていた。(910文字)
中学の体育授業のヒトコマ。何だかんだで話に陸上ネタがちらついてしまうという……
ここでも野郎どもの品評会が始まっていた。
「長山あたりはどう?」
「顔は可愛いけどセクシーさが足りないな」
「林は?」
「んー、胸でかいけど太りすぎ」
「じゃあ小池」
「『二次元』なんか論外。全然萌えねーって」
一人の発言にどっと笑いが起こる。体操着姿の女子がこちらをいぶかしげに見た。野郎たちが慌てて口を塞ぐ。
ちょうどボールが転がってきたので、審判をしていた僕はそれを拾ってコートに投げ入れた。
得点板のもとへ戻る。なんとなく、視線がネットの向こう側へ移った。女子がバレーボールの試合をしている。目につくのは噂の人物だ。
髪型は痛いツインテール。アニメキャラの限定ハンドタオルを巻いていた。舌っ足らずの声はソプラノを超えて超音波。メガネがずり落ちているのは鼻が低いせいだ。体は扁平で横から見ても女性特有の胸や尻の膨らみが見えない。
女子たちからはウエスト細い、なんて言われているけど、男子からは栄養失調じゃね? という反応しか返って来ない。
彼らの言う「二次元」というのは彼女のアニメオタクをもじったわけでなく、「まるで絵のような肢体」という皮肉がこめられているのだ。
しばらくして授業終了のチャイムが鳴った。
ツインテールが翻る。小池は真っ先にコートを飛び出した。これから着替えて新刊の漫画を買いに行くのだろう。野郎どもは小池を横目に思い出し笑いをしていた。
奴らは知らない。小池の走っている姿が、それこそ絵のような美しさだということを。
小池は小学生にして全国レベルの俊足を持っていた。卒業前に靭帯を損傷しなかったら今頃他校の陸上部で活躍していただろう。
けどそんな過去を知る者はいなかった。この中学に彼女と同じ小学校だった奴はいない。もしかしたら小池自身がそれを望んでこの学校を選んだのかもしれないけど。僕は偶然知ったけど本人にも他人にも言う気はなかった。
小池の背中を見送る。輝きを取り戻している彼女に僕は安堵とは別の感情を抱いていることに気づき始めていた。(910文字)
中学の体育授業のヒトコマ。何だかんだで話に陸上ネタがちらついてしまうという……
プロフィール
HN:
和
HP:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
最新記事