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もの書きから遠ざかった人間のリハビリ&トレーニング場。 目指すは1日1題、365日連続投稿(とハードルを高くしてみる)

2024

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2013

0402
 犬の散歩をしていると、段差につまづいた。
 僕は服についた土を払った。派手に転んだせいで持っていたケーキの箱が飛んでしまった。
 どこいっちゃったかな?
 僕はあたりを見回す。すると犬のペロが壊れた箱の中に顔をつっこんでいるのが見えた。口元が真っ白だ。
 僕は慌ててペロを引き離す。けどもう遅い。ひとつダメになってしまってる。
 残ったケーキは二つ。うちはお父さんとお母さんと僕の三人家族。おばあちゃんはみんなで食べてねっていったのに。
 おばあちゃんの家に戻った方がいいかな? それとも家に帰って正直に話せばいいのかな?
 僕が悩んでいるとペロが僕にすりよってきた。口に二つ目のケーキをくわえながら。
 あああ、どうしよう。
 僕は頭を抱えた。
 ひとつのケーキを三人で分けても物足りない。かといって他の誰かが食べられないというのも何だかかわいそう。
 ええい、こうなったら!
 僕は最後のひとつを手にし、口の中に放り込んだ。甘いバニラの香り。クリームはしっとりで中のスポンジがふわふわで、今にもほっぺがおちそう。お腹いっぱい、幸せいっぱいだ。
 口のについたクリームをハンカチで拭く。それでペロの口も拭いてから、ケーキの箱を公園のゴミ箱へすてた。
 よし、これで完璧。
 散歩の途中でおばあちゃんに会ったのは、そこでケーキをもらったのはなかったことにしよう。
 僕はリードを引っ張ると、まっすぐ家に向かった。(607文字)


このあと少年は家に帰るけど、ケーキを食ったことは祖母経由で親にバレバレという小話。
文字数が微妙。ブログタイトルを変えようかなぁ

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2013

0401
 私は昔からこの国の人たちに慕われていました。
 春になると人々は私のもとへ集まります。
 大人たちは酒をかわし、子供たちは花を摘んで飾りを作り、恋人たちは私の前で愛を語らいました。みんな笑顔で私を愛でました。
 私はそんな彼らを見るのがとても好きでした。花をつける春が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
 ところがどうでしょう。
 ここ数年は私の周りに集まる人たちがぐっと減ってしまいました。
 それどころか、私がいくら綺麗な花を咲かせても、人々に笑顔すら浮かびません。
 花が散る頃になると、すすり泣く人の姿も見えました。
 一体何が起きたのでしょうか。
 その原因はこの国の情勢にありました。
 今この国は大きな戦をしています。
 戦争に行く人たちは私の生き様を自分の人生に重ね、憂いていました。
 残された人たちは私を見るたびに尊敬と畏怖の目を向けました。
 いつか満開の花を咲かせ、朽ちる前に潔く散る――それが美しき人生なのだとこの国の人たちはうたいました。
 私は戦争という大きな渦に利用されたのです。
 私は悲しみに打ちひしがれました。私はみんなの笑顔が見たくて生きてきたのに。
 花は散ることはあれど、葉は残ります。生い茂り朽ちたあとも蕾をつけて次の春を待ちます。
 私は死にゆく存在ではないのです。
 だからどうか――どうかそんな顔しないで下さい。私は生きる希望でありたいのです。
 私は祈ります。来年もたくさんの花を咲かせられますように。そしてみんなの笑顔が戻りますように――と(649文字)

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2013

0331
 朝起きると枕元に携帯が置いてあった。キラキラにデコってあるそれは俺の趣味からはるかに遠いものだった。
「もしかして――やっちまった?」
 俺は食事や酒の席で携帯をテーブル上に置く癖がある。
 おそらく俺の隣りに座っていた誰かが携帯をテーブルに置いていたのだろう。そして帰る時どちらが相手の携帯を持って帰ってしまった――そういうことだ。
 俺は一生懸命その時のことを思い出そうとする。昨日の飲み会、二次会の時点で俺は完全にできあがっていた。その先の記憶が全くない。
 俺は相手の捜索を早々に諦めると、改めて携帯を眺めた。これを手にするのはどんな人物なのだろう、と想像する。色合いからして女性だろう。
 一瞬、この携帯で相手に連絡を取ろうと思ったけど、こういうのはきっとロックがかかっているはずだ。
 警察にでも届けた方が無難そうだな。
 俺は結論を出した所でため息をつく。昨日を振りかえり、よく家まで帰って来れたものだと思う。
 しかも靴もスーツも脱いでた。ちゃんとベッドに寝ていた。
「すげーよなぁ俺」
 突然、携帯がけたたましい音を立てた。大きな画面をのぞきこむと「自宅」という文字と数字がが大きく打ちだされていた。
 俺の知らない番号。おそらく、持ち主が電話をかけたに違いない。
 仰向けに転がったまま俺は電話に出ようとする。すると「やだ、出ないで!」と甲高い声が。
 次の瞬間、バスタオルでくるんだ女性が俺の携帯をひったくる。
 えー…………っと?
 ツッコミ所は色々とあるのだが。彼女はどこからやってきたのだろう。そもそもここは俺の部屋のはず――
 俺はベッドからむくりと起き上がる。そして重大なミスに気がついた。家具は同じだが微妙にレイアウトが違う。
 あれ? もしかして――間違えたのは俺の方?
「うわ……」
 こうして俺は更に頭を抱えることになる。(782文字)
 
***

お題3つ目にして文字数オーバーしちゃいましたよー(´・ω・`)

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2013

0330
 だから言ったのに。
 僕は何度も君に忠告したはずだ。あいつだけはやめておけって。泣きを見るのは君の方だって。でも君は僕の話なんて全く聞いちゃいなかった。
 ああ、分かってるよ。雨が降ろうが槍が降ろうが、恋している間は周りのことなんて全く見えていないんだって。
 マスターも私のことバカだなって思っているんでしょうって?
 まぁ、ちょっとは思ってた。本当に、ほんのちょっとだけだけどね。
 でも考え方を変えてみようよ。
 あいつは最低な男だったけど――決定的瞬間を見れただけ、あいつの本心に気づけただけでも君はラッキーだったとは思えない?
 え? そんなの全然慰めにもなってない?
 そうだね。今の君に僕の言葉はなんの意味もないかもしれない。
 今日はとても疲れたね。
 カプチーノを御馳走してあげよう。
 恋を終わらせるために、頑張った常連さんへのご褒美だよ。
 全部飲んだら、お家に帰りなさい。ぐっすり眠って、明日からまた新しい恋を見つければいい。
 エスプレッソな出来事もミルクの泡に囲まれて弾けて、いつか優しい思い出になるはずだから。(471文字)

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2013

0329
「あのー」
 声をかけてきたのは彼の方だった。耳に響いたのは心地よい低音。まつ毛の長い二重はどこか色気を感じさせ、私は一瞬うろたえる。
 それでも私は冷静をかぶって、感情を堪えた。2階のベランダから軽く会釈をする。
 アパートの大家さんから話を聞いていたけれど。新しい住人はなかなかのイケメンだ。確か、私と同じ年とかそうでないとか?
「昨日から下に引っ越してきた山田なんですけど」
一階の庭から私を見上げる姿はシェイクスピアさながら、ロミオとジュリエットの有名なシーンを思い起こさせる。
彼の容姿も手伝ってか、胸の高鳴りがなかなか止まらない。
 もしかして。これは新しい恋の始まり? 私の中で淡い期待が広がる。
「あの」
「は、はいっ」
「コレ、うちの前に落ちてたんだけど」
 そう言って彼は手にしていた小さな布を広げる。
 レースであしらわれた逆三角形は微妙なすけ具合を見せていて、風にひらひらと舞っていた。 
「こんなにうっすいパンツ履いてて腹冷やさない?」
 その直後、私の絶叫がアパート中を突き抜けたのは言うまでもない。(464文字)

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プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
すろーなもの書き人。今は諸々の事情により何も書けずサイトも停滞中。サイトは続けるけどこのままでは自分の創作意欲と感性が死ぬなと危惧し一念発起。短い文章ながらも1日1作品書けるよう自分を追い込んでいきます。
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